漆に弱いのに、無理に続けると死にます。漆かぶれで死にかけた体験談

家庭菜園と共にもう一つの趣味である木工の話です。

これから漆芸を志す方、金継ぎや蒔絵のワークショップに参加しようと考えている人にとって漆にかぶれないかということが、心配だと思います。漆で死にかけた私の体験です。

花器

欅の花器 拭き漆仕上げ

15年程前にヨシ造が、作った拭き漆仕上げの花器を、妹が引っ張りだしてきてフラワーアレンジメントをしてくれました。漆仕上げの花器の場合、剣山を使う生け花では水を張った部分にシミが付いたりしますがビニールシートをひいた上にオアシスを用いたフラワーアレンジメントは、その心配が無く良いものです。

木工ロクロを始めた際に最初に作った花器ですので今から見れば稚拙なデザインで形もいびつですが、漆塗りは綺麗です。しかし、私が漆仕上げで仕上げた物は、数点あるのみで現在は漆を一切やっていません。

何故漆塗りを始めたのか

15年程前に以前より興味のあった木工ロクロの機械販売と教室をやっている所が、県内であるとネットで知り、木工ロクロを購入して教室に通いました。その師匠は、ロクロでの木地作成だけでなく漆芸も行っていて、私に漆塗りを強く勧めました。師匠の作品は、素晴らしいもので私も是非教えて頂きたかったのが、私は生まれつき肌が弱く漆塗りを行うことをためらっていました。師匠曰く「二、三回かぶれたらかぶれなくなる。教室の生徒で喘息アレルギーの女性でもかぶれなくなった。」と言うことでした。

そこで、ネットで漆かぶれについて検索しました。

漆かぶれのネット情報

ネットに載っていたのは以下のとおりです。

・漆に全くかぶれないという人もいるが、漆職人でも体調によってはかぶれることがある。
・二、三回かぶれると免疫(正しくは、耐性?)が出来てかぶれにくくなくなる。
・漆かぶれには、沢蟹のつぶし汁や、杉・スギナ・枇杷の煎じ汁が効く。
・漆を少量のむとかぶれにくい体質となる。(実行して救急車で運ばれた女子美大生がいる。)
・漆かぶれで死んだ人はいない。

しかし、一番興味深かったのは、木工家の矢澤金太郎氏の奥様の話でした。矢澤氏は全く漆にかぶれない体質であったそうですが、ある日奥様は、矢澤氏が漆を拭いたタオルで顔を拭いてしまいお岩さんのようになってしまったそうです。それ以来、矢澤氏が触ったドアノブを触っただけでかぶれたそうです。しかし、ある時期どうしても仕事の工程上、奥様が漆を塗らなければならないようになったら、それ以来不思議とかぶれなくなったそうです。漆かぶれも気の持ちようということでしょうか。

私は、この話を読んで漆塗りをやってみようということになりました。

漆かぶれ一回目

初めての漆塗りは、冒頭の花器でしたが初めて漆を触ったので、手は漆まみれ顔にも漆をつけるという状態でしたが、全くかぶれません。自分は、漆にかぶれない体質だったのだと勝手に思いました。

私が行っていたのは、拭き漆という技法でした。漆を塗って拭き上げ乾燥後、耐水ペーパや砥石で研磨する「研ぎ」という工程を何度も繰り返しながら仕上げていく方法ですが、私は漆にかぶれないという過信から風呂上りにパンツ一丁でこの研ぎをするという愚行をしてしまい、全身派手にかぶれました。

後で師匠に言われたのですが、風呂上がりは毛穴が広がっているのでかぶれやすく、又、研ぎの際に出る研ぎカスは、生の漆よりかぶれやすいということでした。

とても、沢蟹のつぶし汁等で治る状態ではなく皮膚科にかかり注射をしてもらいステロイド軟膏を処方してもらいましたが、完治まで一月以上かかりました。覚悟はしていたとはいえ、その間耐え難い痒みに襲われてかなり後悔しました。

漆かぶれ二回目

完治二か月位経過後、再開しました。今回は、薄手の木綿の手袋の上に薄手のゴム手袋・長袖・長ズボン、顔や首には、馬油を塗るという完全防備で行いましたが、再開後一週間でかぶれて病院行きとなりました。

漆かぶれ三回目

もう、漆は出来ないとあきらめかけましたが、ネットで「かぶれにくい漆」という商品名の漆があるとの情報がありました。商品説明では天然の漆をかぶれにくくするする特殊加工をしたものであるが、絶対にかぶれないというものではないとのことです。早速取り寄せまして、塗りました。

結果は、二日後にかぶれ再度病院行きです。

漆かぶれ四回目

漆かぶれの耐え難い痒みで、漆塗りはあきらめようと思いましたが漆刷毛等高価な道具を揃えた事と未完成の作品があることから、漆を手に付けない様に最大限の注意をはらって四回目を行いました。

朝から作業を行い昼食前に作業完了しました。昼食を終えウトウトと昼寝をしていたところ体調がおかしくなり飛び起きました。全身に震えが来て、指先が焼けるように痛い。みるみるうちに指先に水膨れができて、湿疹が全身に広がり、まるでホラー映画を見ている様でした。

救急車を呼ぼうと思いましたが、格好が悪いので家族に病院に送ってもらいました。医者にはアレルギー感作と診断されました。

菓子鉢

欅の菓子鉢 拭き漆仕上げ(死にかけながら仕上げました)

アレルギー感作とは

繰り返し刺激を受けることで、それに対する反応が増大することです。

若い頃なら漆を扱うことにより耐性がつくこともあるかもしれないが、年をとってからだと段々酷くなるとのことでした。次にやれば命の危険もあると医者に言われました。もうあきらめる他ありません。

まとめ

乾燥後の漆は、水・熱・酸・アルカリにも強い強固な塗料です。縄文時代より利用されていて安全性も保障済みです。又、仕上がりも美しく作品は、芸術の領域にもなる可能性があります。

乾燥前の漆はかぶれます。大部分の人は克服でき、かぶれても大したことにはなりません。

しかし、体質により重大なアレルギーを起こすこともあります。これから漆を始めようとする人は、ご注意を。

 

 

 

 

 

 

 

 

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